ミツバチになった男〜Jean Orsatti
これぞコルシカ人。あまりに嬉しくておかしくて懐かしくて、失礼だけどなぜか会った瞬間に笑ってしまった。
彼の一挙一動に異常なほどの興味をそそられる。彼は何を見て、何を考えているのか。 私はコルシカ人ではない。でもオルサッティおじさんを見ていると、懐かしい人に会えたような感覚を覚えるのはなぜ?このおじさん、一体何者? ぶっきらぼうな態度で、自分の言いたいことだけを言う。質問の答えはまず返ってこないと思った方がいい。かといって、耳が悪いとか、意地悪とかそういうわけではない。世の中には自分が持ってるスケールでは計り知れない人も存在するということだ。 「この無骨で頑固なコルシカ親父は、官能の蜂蜜を作っている」 ウソみたいな、ホントの話。 ほら口を開けて、と言われ恐る恐る口を開くと、蜂蜜がたっぷりスクープされたスプーンを突っ込まれた。その瞬間、体中の細胞がざわめき鳥肌を立てる。すごい!まだじっくりと蜂蜜を味わう心の準備ができてなかったのに、こんなサプライズちょっと悔しい。 このぶっきらぼうなおじさんが、こんな繊細で甘美な官能の世界を作り上げているとは。彼のイメージと蜂蜜の味のあまりに極端なコントラストに、セクシーさすら感じてしまった。
養蜂業は人をクレイジーにさせるという。
養蜂家は365日ミツバチの群と一緒に過ごす。働きバチの働きっぷりを見守り、巣のコンディションを整え、女王蜂の産卵状況と群の生態系を観察し続けなければならない。ミツバチの繁殖状況、栄養状態がその群の生命力を決めるからだ。 ここでいう群の生命力とは、群の蜂蜜採集力と同義語であり、養蜂家の優劣はここで決まることになる。 膨大な数のミツバチのブーンという羽音を聞いたことがあるだろうか?
森の奥を飛び回るミツバチたちの姿は私たちの目には見えない。でも、私たちの耳には大量の羽の振動音が、ブーンというモーター音のように響く。群からかなりの距離があったとしても、その鼓膜の奥を重く静かに刺激する音はどこからともなく届く。
モーターはスイッチを切れば音が消えるが、ミツバチの羽音は永遠に続くかのように思われる。音源が見えない音というのは、非常に人間の心を不安定にさせる。しばらくその羽音の中で過ごすと、森を離れてもずっと耳の奥で羽音が聞こえるような錯覚さえ起こす。 なるほど、これはクレイジーになるかもしれないわ。
オルサッティおじさんは地元でも有名人。観光に訪れた芸能人は彼と一緒に写真を撮りたがり、彼を知る人は彼について話したがる。フォションからのオファーも断わっちゃうくらい強気で媚びないこのおじさんの、どこにそんな魅力があるのだろう?
彼と一緒にハチの巣箱を回収した人から面白い話を聞いた。 通常5分で終わる巣箱の移動に、彼は20分以上かける。ミツバチを手荒に扱うことは絶対に許されない。白いつなぎにマスクをして、スローモーションのように緩慢な動作で巣箱を運ぶ姿は、宇宙飛行士の無重力歩行のように見えるらしい。 衝撃への怯え、巣箱に傷つけられる痛み、それはミツバチだけのものではなく、オルサッティおじさんのものでもあるというわけだ。そうか、彼は蜂蜜おじさんではなく、ミツバチおじさんなのね。彼の背中からブーンという羽音が聞こえてきそう。 どうだうまいか?と聞かれ、とても美味しいですと答えると、子供のような笑顔を見せて喜んでくれた。こういう素敵なコルシカ親父が永遠にコルシカに存在し続けて欲しいと心から願う。
オルサッティおじさんのはちみつ
Jean Orsatti / AOC Miel de Corse ■100% FLEURS SAUVAGES(夏のマキ) 密源 ・La bruyere d'ete ・L'anthyllis ・Le thym corse ・La germandree コルシカの夏のマキを彩る野生のハーブが密源。夏に収穫される蜂蜜は、複数の密源がミックスされている。芳香が高く夏らしい滋養高い味。 ■ARBOUSIER MIEL AMER(秋のマキ) 密源 ・Arbouse Arbouseはコルシカの秋のマキを覆う白い花で、さくらんぼうのような形でピーチのような味の実をつける。赤みが強く美しい艶と苦味を持つ、大人向けの濃厚な蜂蜜。 |
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